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イヌワシの衝突死 3

風車の真下から見上げるようにしていると、回転するブレードが迫ってくる速さを実感することができます。そのスピードは先端部で時速150~300kmと言われていますので、場合によっては新幹線以上速さで迫ってくるわけです。
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「風の精霊」とも呼ばれるイヌワシの運動能力は相当高く、観察していると、強風の中でも自由自在に急反転したり降下や上昇を繰り返したりと、わくわくするような飛び方を見せることがあります。そのイヌワシがなぜ、風車に接近し回転翼にたたかれ翼をもぎ取られて死んでしまったのでしょうか。

                                 六角牛山を望む
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以上   Canon EOS20D  EF17-40mm F4L      


周囲の環境は、小動物を発見しやすくイヌワシの狩り場として好条件です。イヌワシは好んでこの場所にやって来ていたのかもしれません。風車の建つこの付近には貞任山のピークがあり、南西の方角には六甲牛(ろっこうし)山、北西には早池峰と、柳田國男の名著「遠野物語」に登場する山々を望むことができます。

                            右奥が早池峰、左は薬師岳
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 Canon EOS40D  EF70-200mm  F2.8L IS

周辺にあるテリトリーから飛来する頻度が上がれば、その分、風車に接近する時間も増えます。風車は風の通り道を選んで建てているので、風を利用して飛んでいるイヌワシは必然的に風車の近くも通過することになります。また、ウサギやヘビなどの小動物を見つけてハンティング体勢に入った場合は、風車の存在よりも餌の方に気をとられることもあるでしょう。それでも、視力、運動能力に優れるイヌワシなら、ブレードの接近を関知して回避行動をとるのではないかと思うのですが、それが非常に困難であることが実験で証明されています。「モーション・スメア現象」と呼ばれ、高速で動いているブレードに接近すると、網膜の感知能力がスピードについていけなくなり、急にブレードが見えなくなるということが起こるのだそうです。

その瞬間を見ていた人はいないので衝突の原因は詳しくわからないのですが、イヌワシが風車のブレードに翼を切断されて死んだことは動かしようのない事実です。林立する風車群の中に身を置いていると、死んだイヌワシの無念が伝わってきて、いたたまれなくなってきました。

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東北地方環境事務所の報道発表資料に、今回のイヌワシ衝突死に関する詳細な内容がありますので参考にしてください。
http://tohoku.env.go.jp/pre_2008/1114c.html
by fieldnote | 2008-12-25 07:10 | イヌワシ