人気ブログランキング |

イヌワシの衝突死 4

12月19日、NHK盛岡放送局は「検証 イヌワシ衝突死」というリポートを「おばんですいわて」という番組の中で放送しました。風力発電施設の現場でイヌワシの遺骸が発見されたのが9月20日、環境省の発表が11月14日であり、スピードが命の報道現場にあって、いささか鮮度の落ちた「事件」でありながら、6分もの時間を使って取り上げていました。この問題に詳しい人たちからすると食い足りない面もあるようですが、NHK盛岡放送局の姿勢は評価されるべきと思います。

中でも、風車に羽を切断されたイヌワシの遺骸の画像が放映されたことは注目に値します。この画像は、聞くところによると、宮古自然保護官事務所では撮影を拒否され、仙台の東北地方環境事務所まで行って撮影してきたとのこと。リポートした菊池ディレクターの気概が感じられました。
a0087133_2323012.jpg

放映された画像を撮影したのは事業者であるユーラスエナジー社なのか、報告を受けた環境省なのか、それとも解剖をした北里大学獣医学部なのかはわかりませんが、バックに車や人物など全く関係のない写り込みがあるところなどを見ると、ポスターか何かの上に無造作にイヌワシの遺骸を置いて撮影したものでしょう。この問題が当時、関係者の間でどのように受けとめられていたかが伝わって来るような気がします。

放送の中では、日本野鳥の会宮古支部長の佐々木 宏氏、岩手県立大学教授の由井政敏教授がそれぞれの立場から見解を述べていました。その中で私が注目したのは由井教授の見解です。取材する側からすると専門家の見解は欠くことのできない要素だと思いますが、その話の中心は次のようなものでした。

「風力発電施設建設前に3年間調査した。その時はイヌワシはほとんど現れなかった。その結果から、イヌワシの衝突事故の確率は<50年に1頭>という結論を導き出した。風車建設後に急にイヌワシが飛来するようになった。その出現率は建設前の20倍以上である。」
a0087133_23255570.jpg
                   左下の彩色されたメッシュ付近が衝突現場


a0087133_23262311.jpg


風力発電施設建設をはさんで出現率に20倍以上の差があるというのは、野生生物の生態を研究、観察している者の通常の感覚でいえば「極めて不自然」なことです。さまざまな人たちが、建設前の3年間の調査方法や結果を疑問に感じているようですが、当然のことと思います。

放送は由井教授の次のような言葉で締めくくられています。
「北上高地は牧草地以外は森林が繁っているのでイヌワシの餌場が無くなり、繁殖地を離れて遠くまで来ざるを得ない状況になっている。今回の反省だが、3年調査しても、4年目、5年目にますますエサ狩り場が無くなるからイヌワシが来る可能性がある。風力(発電施設)を建てたら、それと同じくらいたくさんのエサ狩り場を作らなければ、必ずイヌワシは来る。」

事前の環境評価を行い、建設に同意した当時の組織の長としては、このような説明をするしかなかったのかもしれませんが、いささか説得力に欠ける見解でした。ここには具体的なことは書けませんがいろいろな裏話もあるようです。

このリポートの直後のニュースでは、日本野鳥の会岩手県連絡協議会会長、日本野鳥の会盛岡、宮古、北上の各支部長、財団法人日本野鳥の会会長名で岩手県知事宛に「釜石広域ウィンドファームにおけるイヌワシ衝突死の対処についての要望」を提出したことを伝えていました。

      

ここに掲載した画像はテレビ放送された画面を撮影したものです。掲載にあたっては、事前にNHK盛岡放送局に連絡し許可をいただいています。
by fieldnote | 2008-12-31 23:58 | イヌワシ

イヌワシの衝突死 3

風車の真下から見上げるようにしていると、回転するブレードが迫ってくる速さを実感することができます。そのスピードは先端部で時速150~300kmと言われていますので、場合によっては新幹線以上速さで迫ってくるわけです。
a0087133_6423624.jpg


「風の精霊」とも呼ばれるイヌワシの運動能力は相当高く、観察していると、強風の中でも自由自在に急反転したり降下や上昇を繰り返したりと、わくわくするような飛び方を見せることがあります。そのイヌワシがなぜ、風車に接近し回転翼にたたかれ翼をもぎ取られて死んでしまったのでしょうか。

                                 六角牛山を望む
a0087133_6532057.jpg
以上   Canon EOS20D  EF17-40mm F4L      


周囲の環境は、小動物を発見しやすくイヌワシの狩り場として好条件です。イヌワシは好んでこの場所にやって来ていたのかもしれません。風車の建つこの付近には貞任山のピークがあり、南西の方角には六甲牛(ろっこうし)山、北西には早池峰と、柳田國男の名著「遠野物語」に登場する山々を望むことができます。

                            右奥が早池峰、左は薬師岳
a0087133_725322.jpg
 Canon EOS40D  EF70-200mm  F2.8L IS

周辺にあるテリトリーから飛来する頻度が上がれば、その分、風車に接近する時間も増えます。風車は風の通り道を選んで建てているので、風を利用して飛んでいるイヌワシは必然的に風車の近くも通過することになります。また、ウサギやヘビなどの小動物を見つけてハンティング体勢に入った場合は、風車の存在よりも餌の方に気をとられることもあるでしょう。それでも、視力、運動能力に優れるイヌワシなら、ブレードの接近を関知して回避行動をとるのではないかと思うのですが、それが非常に困難であることが実験で証明されています。「モーション・スメア現象」と呼ばれ、高速で動いているブレードに接近すると、網膜の感知能力がスピードについていけなくなり、急にブレードが見えなくなるということが起こるのだそうです。

その瞬間を見ていた人はいないので衝突の原因は詳しくわからないのですが、イヌワシが風車のブレードに翼を切断されて死んだことは動かしようのない事実です。林立する風車群の中に身を置いていると、死んだイヌワシの無念が伝わってきて、いたたまれなくなってきました。

*     *     *     *     *     *     *

東北地方環境事務所の報道発表資料に、今回のイヌワシ衝突死に関する詳細な内容がありますので参考にしてください。
http://tohoku.env.go.jp/pre_2008/1114c.html
by fieldnote | 2008-12-25 07:10 | イヌワシ

イヌワシの衝突死 2

道なりに進んでいくと、風車はどんどん近づいてきました。この日は曇りで風が強く、時々雲が切れて青空がのぞく天気。発電用の風車はすべて西を向いて回転していました。ブレード(風車の羽)は時計の針と同じ方向に回っています。
a0087133_651021.jpg


風車の下まで来るとその大きさに圧倒されます。車のエンジンを止めると、シューシューという音がブレードの回転に合わせて鳴っているのが耳に入りました。
a0087133_6563630.jpg


さらに進んで、風車の根元までやって来ました。立ち入り禁止になっていると思っていたのですが、意外にも、規制をするような柵や看板は何もありません。「風車から雪や氷が落ちてくるので気をつけるように」という小さな看板があるだけでした。さすがに回転しているブレードの真下に行くのは気が引けます。
a0087133_745090.jpg
以上   Canon EOS20D  EF17-40mm F4L

ちょっと離れた所から見ていたときは、思ったよりブレードの回転スピードは遅く感じたのですが、根元に近づいてしばらく見ていると、そうではないことがわかってきました。
by fieldnote | 2008-12-19 07:24 | イヌワシ

イヌワシの衝突死 1

釜石の和山高原に行ってきました。11月14日から15日にかけて県内の新聞、テレビが一斉にこのことを報道したのでご存じの方も多いと思いますが、ここは「国内で初めて、イヌワシが風力発電の風車に衝突死」した場所です。

釜石の鵜住居(うのすまい)と遠野の青笹を結ぶ県道35号線の釜石側にその入り口があり、写真のような看板が立っていました。
a0087133_2225110.jpg


急な坂を車で上ること約15分、高原状の場所に出ると牧場があり、赤毛の牛が雪の草原で草を食べていました。よく見ると後ろに新山牧場側に立つ風車が見えます。
a0087133_22332335.jpg


さらに牧野の中のグネグネとした道を進むと、やがて今回の「イヌワシ衝突死」の現場である遠野と釜石の境界に立つ風車群が見えて来ます。
a0087133_22381399.jpg
以上   Canon EOS20D  EF17-40mm F4L

この辺りは、私が釜石に住んでいた20年ほど前、「和山フェスティバル」という催しが開かれた場所ではないかと思います。確か地元の振興ということで大々的に宣伝されて、かなりの人が集まりました。私は主催者から依頼されて星空観察と早朝の野鳥観察のお手伝いをした記憶があります。が、久しぶりに訪れてみると稜線に沿うように風力発電用の巨大風車が林立し、一種異様な雰囲気を醸し出していました。

これから何回かに分けて、ここを訪れて見てきたこと、考えたことなどをお伝えしようと思います。
by fieldnote | 2008-12-14 23:02 | イヌワシ

天空のほほえみ

夕方、西の空に笑顔のように星が浮かんでいるのが見えました。
a0087133_232372.jpg
        Canon EOS40D  EF70-200mm  F2.8L IS

月の上、左側が金星、右側の星は木星です。
by fieldnote | 2008-12-01 23:29 | 天体