人気ブログランキング |

十字架とオオカミの山と

遠野市の東側に位置する貞任高原から撮影した、西に沈む夏の大三角です。天の川の中に、はくちょう座が大きな十字架を作っています。これを北十字といいます。ちょうど1ヶ月前の午後7時頃撮影したものですが、今日の午後5時半頃とほぼ同じ眺めです。クリスマスの頃の夕べ、西の空には大きな十字架が姿を現すのです。
a0087133_20364794.jpg
Canon EOS 5D MarkⅢ + SIGMA 15mm  F2.8   25秒   ISO3200   固定撮影


ところで、ここ貞任高原は画面の左側を見るとわかるように、赤い光に包まれています。これは風力発電のための巨大な風車が林立し、たくさんの衝突防止用警告灯が点滅しているからです。ここから東側と北側は森が切り開かれ、数十基の風車が稼働しており、付近の山はシュウシュウという不気味な風切り音が1年中響いています。そして、夜は雲や霧が出ると赤い光に覆われます。遠野物語の41話には「和野の佐々木嘉兵衛、或年境木越の大谷地へ狩りにゆきたり。死助の方より走れる原なり。秋の暮れのことにて木の葉は散り尽し山もあらは也。向の峰より何百とも知れぬ狼此方へ群れて走り来るを見て恐ろしさに堪へず、樹の梢に上りてありしに、其樹の下を夥しき足音して走り過ぎ北の方へ行けり・・・」という記述があります。明治の中頃のことですが、かつてこの場所はオオカミが闊歩していたのです。

画像の下の方、街明かりが眩しいところは遠野の市街地です。少し前まで、河童が人に悪さをしたり、座敷わらしや寒戸の婆が居た場所も、今は一晩中光の渦の中です。この町中からは、天の川は見えなくなってしまいました。

オオカミを滅ぼし、その生息地だった場所で電気をつくり、必要以上の明るさの中で、闇への畏れを忘れて暮らす私たち。遠野物語の舞台の山中で、大きな風車の回転音に怯えながら、いろいろと考えた夜でした。
by fieldnote | 2013-12-23 22:12 | 天体